研究概要 |
本研究では,地域からの消滅や発展といった時間スケールの点で違いはあるが,地球史を通じて起こった種の絶滅・発展を現在主義的な視点で捉え,変化過程のなかに認められる類似点や相違点を明確にするための基礎的な研究を実施した.とくに中海では,無酸素の湖底地点,有機物の負荷の進行している地点,有孔虫の消滅した地点の柱状試料を採取した.そして,これらを堆積物の無機的・有機的な分析をし,群集の変化過程の主要因が海水準の変動によって起こっていることを具体的に示すことができた.さらに,有孔虫群集は,人為的に形成された環境へも敏感に反応し,2〜3年以内で消滅することも明らかにした.また,有孔虫の殻壁構造を解析することで,環境の変化に対して生理的に有孔虫がどのように反応したのか,現世データを得るための調査を実施した.有孔虫殻の硬組織や細胞組織の分析のために,本研究で購入した顕微鏡用落射蛍光装置や偏光装置を使い,バクテイアと関係した細胞の生理的な情報や殻壁構造の光学的な定量化を画像解析ソフトを用いて行なうことができた.さらに,有孔虫殻の厚さについても検討をし,隔壁の厚さが有孔虫の生態を反映していることを明確にすることができた.これらは過去の群集変化と比較する素材となる.有機物量の測定では現有のCHNコーダを用いて分析し,上記の結果と有孔虫の生態解釈を結びつけることができた.
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