本研究では、これまでに日本国内、および日本人研究者により国外で新種(新亜種、1961年以前に変種として報告された分類群も含む)として記載された506フズリナ分類群について、種名、出典(原記載論文)、標本登録番号、産地、産出層準と年代の各データフィールドからなるデータベースを作成した。同時に、原著論文からタイプ標本の標本画像の取り込みを行い、このデータフィールド(標本画像)のデータを上記のデータベースに順次付け加える作業を進めた。また、アジア地域、特に中国から報告されているフズリナ分類群について、同様なデータベースの作成を行った。さらに、これまで提唱されたフズリナ類の属について、分類の再検討およびタイプ標本の画像カタログ作りを行った。フズリナ類の属レベルでのカタログ的文献としては1988年出版の"Foraminiferal Genera and Their Classification"があるが、この中では1980年代以降、特に中国と旧ソ連で提唱された多くの属が未収録のままになっている。それら未掲載の属をできるだけ網羅し、さらに分類の検討(特に同物異名の整理)を行った。現在のところ、およそ180属が有効名であることを確認した。 これら手元に蓄積したデータベースを用いて、次頁に挙げた論文をまとめた。このうち、Ueno(2003)では現在の南西ヨーロッパから東南アジアにまたがるシンメリア大陸の各地域に見られるペルム紀フズリナ群集の属構成をもどに、ペルム紀当時のシンメリア大陸の古地理と古気候を議論した。この論文では、各シンメリア地塊群に分布するペルム紀フズリナ群集の属多様性に着目し、その時代的変遷を検討した。これにより、従来古生物地理的にシンメリア区と一括されていた地域に、2つの明瞭に区分できる地理区が認められることが明らかとなった。
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