本年度の研究実績は2つの主要な部分に分かれる。一つは実験装置の作成である。剪断流は低速高精度のスターラーを使用し、温度制御はオイルバスによることとした。また、剪断流の媒質は水溶液として、結晶成長は塩化ナトリウムを用いることとした。現在のところ成長させる円盤はスターラーに設置した金属円盤を用いることにしてあるが、異なる回転速度を同時に得るためにテーパー構造をとることとした。実験は設定中であり、実験結果を示すに至っていない。来年度早々には実験結果がでる予定である。 第2には、計算機実験である。変成岩系の8成分系においてざくろ石を熱力学的平衡状態を維持したままで、温度圧力経路を指定したときの分別成長による組成変化を完全計算する事に成功した。このことにより、観測系の剪断流中の結晶成長の累帯構造に対する参照系が完成したことになる。計算機実験の結果では、普通の泥質変成岩系では温度約350度から総化学組成により変化して約500度程度までの範囲ではじめにざくろ石が微小量成長する。このときのマンガン量は著しく大きくモルパーセントで80%に達する。その後温度と圧力の上昇により、分別的にざくろ石は成長し、マンガン量は急激に減少する。温度圧力の変化経路によりこの組成のモデル累帯構造は変化する。 第3は、天然系の変成岩の履歴についての精密解析が可能となり、論文がすでに受理されている。この解析では歪み速度の直接推定に至っていないが、理論的に予想される異方成長速度を求めることにより、実験的に確認されることによって決定することが可能である。
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