本年度の研究実績は第1に計算機実験において剪断流動をおこした変成岩にいてざくろ石を8成分系で解析し、中心部から縁部にいたる成長過程で化学平衡を維持しながら化学組成を変化したとして逆問題としてとき、プレート境界において、沈み込む過程でほぼ6kb、500度から11kb、600度の物理条件の連続的変化を記録していることを明らかにした。この研究の発展として、ざくろ石の成長過程が脱水返納であることから、単位圧力変化、つまり単位沈み込み量に対しての脱水した水の量、脱水率について沈み込み過程での連続的な変動についてはじめて計測することができた。この結果7kb、9kbの位置で大きな脱水が起こり、それは熱力学的にモデル計算される脱水変化とは著しく異なることが判明した。これは剪断流動との関係が強く示唆されるが、そのモデル化は次年度以降とした。 第2に剪断流動中のざくろ石の成長過程は特徴的にアニソトロピックに成長することが自然系から示された。前出のざくろ石の成長面は各化学組成、つまり、温度と圧力の各点で定まり、したがって、物理条件の連続的な変化に対して、その点における変成岩の剪断流動の幾何学的構成に対応した成長率が方向を持って観測される。これを自然系において三波川変成帯をモデルに測定した結果、成長率のアニソトロピイ比は500度から600度の沈み込み過程で1から3程度まで次第に増加する事が明らかにされた。すなわち剪断流動速度が沈み込みに伴い次第に増加する。このことはすでに著者により示されていた温度の上昇による実行粘性の低下によることは明らかである。 第3には本研究の結果としてこの目的のために逆転を示す組成域の大きさと組成ギャップの関係をはじめて示し、このモデルが拡散過程を持つことを示した。これは剪断流中の異方成長を強く指示するはじめての結果である。
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