1.すでに開発していた分子シミュレーション計算手法とプログラム(分子動力学法:MXDORTOとMXDTRICL、およびモンテカルロ法:MCORTOプログラム)さらに発展させた。発展内容は主として次のものである。 相転移温度・圧力を含むいくつかの温度圧力条件での(NPT)アンサンブルでのMDおよびMCシミュレーションを行うので、圧力制御方法の依存性を調べることは不可欠である。従来の1)応力テンソルによる基本セル形状のスケーリング、2)パリネロとラーマンの方法による相転移挙動への手法の依存性を調べた。さらに弾性体の運動方程式を用いた圧力一定の分子動力学法の基本方式を確立した。また、新たな汎用原子間相互作用モデルに対応した。 2.分子シミュレーションの計算に必要不可欠な原子間相互作用モデルについては、H_2O、CaO、CaTiO_3などについて12年度に精密化し、13年度はNH-3、GaNを含めより複雑な物質を再現するものを開発し、さらに精密化を行った。 3.シミュレーション計算の初期構造として、完全結晶にあらかじめ点欠陥、転移、粒界などの原型を作成しておく必要がある。このための手法をさらに発展・汎用化し、それを実行するプログラムを開発した。その有効性を、モデルとしての欠陥構造等を作成し、小規模のシミュレーション計算を行い、その安定性・構造変化・欠陥エネルギーなどを評価することにより確認した。 4.大規模計算を行うため、dualCPUのPCの4台による8CPUの分散並列コンピュータシステムを構築し、これに対応して、より大規模な系のための汎用並列分子シミュレーションプログラムを作成した。 5.GaN(ウルツアイト構造、6方晶系)について、様々な方位で初期転位を作成し、MDを用いて緩和した構造を、すでに行っていたCaOのものと比較し、転位構造の安定性と動的挙動を調べた。
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