研究概要 |
1.Mt.Hamilton(California)産試料からの単結晶を用い,メラノフロジャイトの正方晶系低温型から高温型にかけて,4軸型自動回折計によるX線単結晶精密構造解析を行った.これによりメラノフロジャイトの高温型-低温型構造転移は1次の(2次に近い)変位型の転移であることが明らかになった.今年は特にゲスト分子の挙動に注目し,最大エントロピー法によって,高温型の精密電子密度分布の解析を行なった.その結果,5角12面体はほぼ完全にメタン分子によって占められ,それらの優先される方位と無秩序配置について明らかにした. 2.1000℃までの加熱によりゲスト分子が開放される事が明らかになった.またこうして得られたゲスト分子を含まない系についてX線単結晶回折実験を行い,この場合には室温においても分子を含む場合の高温型と同じ空間群が維持され,相変化が生じない事が明らかになった.これは既に国外研究グループによって発表されているNMR研究による推定を否定する結果である. 3.ガス分子に関する,より精密なポテンシャルモデルを扱うために計算機プログラムを改良し,分子動力学法(MD)による計算機シミュレーションを行った.原子平均二乗変位などの構造解析で得られる結晶の時間平均に関する量だけではなく,構造解析では求められない原子結合距離等を計算するためのプログラムを含む計算結果の解析や表示のためのソフトウエアの開発も行った. 4.ゲスト分子を全く含まない系のMDでは構造転移が生じない事が明らかになり,上述3の我々の実験事実を再確認するものである. 5.ゲスト分子を天然メラノフロジャイトと同様に含む(12面体空隙の全てをメタン分子が占め,14面体の約半分をN_2とC0_2分子が占める)系のMDでは,立方基本構造-正方超構造(2x2x1)の相変化が実現され,実験事実を再現している.これらの事から,シリカ包摂化合物の構造変化にとってゲスト分子が重要な働きをしている事が明らかになった.
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