研究概要 |
地殻・上部マントルを構成する岩石の多くは面構造・線構造を形成し,これらの構造が鉱物の選択配向や地震波速度異方性と密接に関係している.特に面構造の発達した岩石では,その面とそれに直交する面とで岩石組織の形態にかなりの違いが認められる.そこで複雑な岩石組織を定量的に記載するため,画像解析ソフトにより500を超える鉱物粒子の形状の統計解析を行ない,流動組織の発達した石灰岩について,片理面とそれに直交する面における組織の違いの定量化を試みた. 石灰岩試料について縦波速度の測定からリファレンスフレーム(X,Y,Z)を決定し,試料の片理面(XY面)とそれに直交する面(XZ,YZ面)の方解石粒子の形状パラメータを計測し,統計解析を試みた.面積,周囲長,円相当径および最大長の分布はほぼ対数正規分布で近似される.これは正常粒成長やオストワルドライプニングによる結晶粒径の示す頻度分布と調和的である. XZ-YZ面に比べXY面で方解石は比較的等粒状であり,今回の解析によってその面で円相当径や最大長の分散が小さく,アスペクト比や円形度は1に近い.一方,片理面に直交するXZ・YZ面では偏平な粒子によりアスペクト比や円形度の値は1から遠ざかり,形状パラメータの分散も大きい.流動組織の発達した今回の岩石では,片理面とそれに直交する面の形状パラメータに比較的大きな違いが認められ,これらの結果は片理面に沿う偏平な方解石粒子の存在を裏づけている. 面積,周囲長,最大長および円相当径の間に相関が認められ,相関関係より決定したフラクタル次元は,XY面で1.11,XZ面で1.14,YZ面で1.13となった.片理面に沿う偏平な粒子により,XZ・YZ面の粒界の形状がXY面より複雑なことは顕微鏡観察からもうかがえ,フラクタル次元の結果と調和的である.
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