研究概要 |
本年度は、特に炭酸水での風化実験を行うための純水とCO_2を混合する装置の開発、ソックスレー抽出器の改良、そしてハンレイ岩質の岩石を対象にした酸性雨の影響についての実験的検討を行った。ここでは、主にハンレイ岩の人工風化実験により得られた知見を報告する。 1.天然での環境に近い開放系での研究を行うために、ソックスレー抽出器を一部改良した装置を用い、55℃に保ったこの抽出部に、片側を研磨した、約50個の室戸岬産ハンレイ岩の岩石片(10x9x5mm大)を入れ、pH=4の硝酸、塩酸、硫酸および蒸留水の4種溶液を抽出器上部より滴下し実験を行った。なお、炭酸水を使用した実験は現在準備中である。 2.ソックスレー抽出器中に入れた岩石片、およびこれと反応した溶液は定期的にサンプリングし検討した。カンラン石、単斜輝石、斜長石などからなるハンレイ岩表面は、酸溶液により溶解し、その程度は酸溶液種によって異なり、硝酸溶液はカンラン石を、硫酸溶液は斜長石をそれぞれ選択的に溶解した。 3.Feを濃集したスメクタイトと何らかの混合層鉱物、およびAlに富むアモルファスな二次生成物を特にカンラン石表面上で認めた。 4.採取したサンプル溶液には、上述した研究結果と調和的に、カンラン石あるいは斜長石に由来するとされる、Fe,Mg,Ca,NaおよびZn,Ni,Scなどの溶脱が顕著に認められた。 以上の結果は、今後予想される地球環境の変化に対応する際の基礎的なデータとなるものと期待される。 なお、2年以上続けて行った岡山県北木島産花崗岩に対する同様な人工風化実験についての報告は、現在印刷中なので省略した。
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