研究概要 |
本研究の目的は,現在の風化作用に及ぼす生物活動の役割を明らかにし,併せて,古土壌との比較対照から,地球史における大気環境の変遷と生物活動とのかかわりを解明することである。 本年度は鹿児島県頴娃地区の玄武岩上と市来地区の石英安山岩上の土壌を取り上げ,日本道路公団の協力の元で極めて"新鮮"な土壌を採集した。これらの試料の中から20個を厳選し,主要元素,REEを含む微量元素,有機炭素,それに硫黄など60余元素について分析を行った。その結果,風化に伴ってMg,Na,K,Siの溶脱やREEの増加等,大局的には期待される結果が得られた。データの解析のためにコンピュータおよび熱力学のソフトを購入し現在シミレーション解析の準備中である。成果は次年度以降になる。 一方,太古代の還元大気環境の根拠とされてきたオーストラリア,ハマスレー地域のいわゆるMt.Rae"古土壌"についても研究した。我々のデータはこれが熱水変質帯であることを示した。熱水性のquartz中の流体包有物をLaser-Ramanにより測定した結果,メタンが確認され,グラファイト存在の可能性が示唆された。また,二酸化炭素ガスは存在しないことも確認した。ノースポール等近隣の熱水活動と対照しても,また二酸化炭素ガスが多かったと言われている太古代大気を考えても非常に興味深い。炭素の生物起源の可能性も高い。また流体包有物の塩濃度は海水のそれの2 4倍もあり,brine poolがあった可能性も高い。これらの研究成果については,地球惑星関連学会(2000年6月,東京)およびGSA(2000年10月,Nevada)で発表し,現在投稿準備中である。また熱水活動の年代をvein中のアパタイトを使って求める準備を進めている。
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