研究概要 |
本研究の目的は,現在の風化作用に及ぼす生物活動の役割を明らかにし,併せて,古土壌との比較対照から,地球史における大気環境の変遷と生物活動とのかかわりを解明することである. カナダ,プロント地区の古土壌について,風化によりREEは原岩構成鉱物から風化生成物中へと異動し二次的なREE鉱物を形成するが,多くの場合この二次的な鉱物は鉄の酸化物と密接に関与していることを明らかにしてきたが,現在の風化におけるREEの挙動が生物活動によりコントロールされているという報告があることから(Taunton, et al.,2000)),現在の花崗岩の風化,特にアパタイトの風化に関与するバクテリアの採取と培養を進めている. 太古代の還元大気環境の根拠とされてきたオーストラリア,ハマスレー地域のMt. Roe"古土壌"について,我々はこれが熱水変質帯であること,熱水脈中および玄武岩流の間にある砂岩からみつかった有機炭素の安定同位体比が-30‰〜-40‰の値を示すことを明らかにしてきたが,今年度は,新たに入手したサンプルのデータを加えるととももにEPMAによる変質鉱物の分析や元素分布などを行った.Kotokuら(2002)は,熱水脈中のapatiteの年代をSHRIMPによりさらに詳細に測定し,2824+/-235Maの値を得た.これらにより,Mt. Roe変質帯は"古土壌"ではなく,玄武岩の噴出と同時に起こった還元的な熱水活動によるものであることをより一層明らかにした.これらの研究成果については,地球惑星科学関連学会合同大会(2002),GSA (Denver,2002)などで発表した.近く学術雑誌に論文として投稿予定である.
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