水素結合をプローブにした地球内部物質中の水素ならびにマントル流体の性質の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12640476
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 鍵 裕之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (70233666)
• キーワード: 水素結合 / 高圧 / ラマンスペクトル / 赤外スペクトル / 重炭酸 / 相転移 / マントル / 中性子回折

研究概要

二年度にわたる補助金によって、高圧下での赤外スペクトル、ラマンスペクトルの測定を我々の研究室で測定する環境が整った。これらの装置を用いて今年度から新たな物質系について研究を展開している。一つは重炭酸塩の高圧力下での相転移についてである。重炭酸塩は常圧下でもひじょうに強い水素結合を形成している。多くの水素結合を持つ固体物質は圧力の増加とともに水素結合が強化し、ときには水素原子間の反発が起こりアモルファス化や他の構造への相転移が起こる。我々は重炭酸カリウムと重炭酸ナトリウムについて高圧下での赤外スペクトル、ラマンスペクトル、X線回折の測定を行った。その結果、重炭酸カリウムは約2.8GPaで高圧相へ相転移することがわかった。実験室でのスペクトル測定に加えて、英国ラザフォードアップルトン研究所での高圧下での中性子回折の測定も開始している。中性子回折の測定によって結晶中の水素原子の位置を精密に求めることができ、高圧下での相転移に水素結合がいかに関与しているかが解明されることであろう。
また、生体分子における金属配位結合の挙動を赤外吸収スペクトルによって解析する研究も東京医科歯科大学の奈良雅之助教授との共同研究として進めているが、今回、新たにエチレンジアミン四酢酸塩の配位結合の圧力依存性をダイヤモンドアンビルを用いた高圧実験によって測定することとなった。今後は水素結合の圧力効果だけでなく、様々な結合様式についても高圧下での挙動を解明していく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Tsuno H, Kagi H, Akagi T: "Effects of trace lanthanum ion on the stability of vatente and transformation from vatente to calcite in an aquatic system"Bull. Chem. Soc. Jpn. 74. 479-486 (2001)
• [文献書誌] Osawa T, Kagi H, Nagao K: "Mid-ingrared transmission spectra of individual Antarctic minometeorites and carbonaceous chordates"Antarctic meteorite Research. 14. 71-88 (2001)
• [文献書誌] Yumoto F, Nara M, Kagi H et al.: "Coordination structures of Ca^<2+> and Mg^<2+> in Akazazascallets Tropic in solution ; FT-IR spectroscopy of side-chain COO-gron"Eur. Jour. Biochemistry. 268. 6284-6290 (2001)
• [文献書誌] Nara M, Okazaki M, Kagi H: "Infrared study of human serum Very-low-density and low-density lipoproteins, Implication of esterified lipid C=0 stretchy bands for charactering lipoproteins"Chem. Phys. Lipids. (印刷中).
• [文献書誌] Yamamoto J, Kagi H et al.: "Fossil presumes of fluid inclusions in mantle xenoliths exhibiting theology of mantle minerals implications for the gedoarometry of mantle mineral using mino Raman Spectroscopy"Earth Planet Sui Lett. (印刷中).