珪藻は海洋において第一次生産の約70%を担い、さらに深層あるいは中層に珪酸質の殻に閉じ込め効果的に有機炭素を移送するため、大気の二酸化炭素にとって生物ポンプとして機能するものとして注目されている。珪藻のブルームの原因について明解な説明がなされておらず、申請者は珪藻が利用するケイ素の形態のうち粒子態ケイ酸を評価することを目的としている。 そのために、本年度は主に次の二点について研究を行った。 テルビウムをドープしたケイ酸塩粒子の作成 石英、酸化テルビウムを均一に混ぜ、炭酸ガスレーザーで局所的に加熱することにより、混合粉末からテルビウムのドープされたケイ酸ビーズを作ることに成功した。これを乳鉢で細粉することで粒径5μm以下の均一な微粒子を調整した。 珪藻と粒子状ケイ酸との分離条件の検討 珪藻と粒子状ケイ酸の分離法を各種試みた。メンブレンフィルター、遠心分離法等を試みたが、良好に分離することができなかった。ナイロンフィルターを用いる方法が両者を最も良好に分離することがわかった。さらに細かくろ過条件を検討したところ、20μmナイロンフィルターで圧力をかけずにゆっくりとろ過を行うことで、珪藻の破壊を抑えつつ、ほとんどの珪酸塩粒子のみをフィルターを通過させることに成功した。 培養実験 珪藻を溶液ケイ酸ではなく、粒子状ケイ酸を用いて培養した所、約一週間後に実際に増殖することを確認した。 以上、本研究に必要な基礎を全て確立したので、次年度に対照培養実験を行うことが可能になった。
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