南極氷床の年代は35万年以上といわれている。すなわち南極氷床には過去35万年以上の環境変化その他が記録されていることになる。しかし、氷床の年代を正確に決める方法がない。本研究では氷床中に存在すると考えられる世界規模の大噴火による微小火山灰粒子を用いてその噴火年代から氷床の年代を求める可能性をH15コアを用いて検討した。 1.南極H15氷床コアの電気伝導度の高い部分を、融解濾過して得られた10μmサイズの固体微粒子を、分析装置付走査型霞子顕微鏡(SEM)での形態観察、Si(ケイ素)の存在、微小固体粒子の数が電気伝導度及び氷床中の火山性エアロゾルの量と相関するという結果から、この微粒子が火山起源すなわち微小火山灰粒子であることを確認した。 2.微小火山灰粒子の量と火山性エアロゾル(火山ガスに由来)の量の関係を検討したところ、多くの場合は相関するが、相関しない場合があることがわかった。これは過去の大規模火山噴火において(1)火山灰と火山ガスを両方放出したもの、(2)火山灰は出したが火山ガスは放出しなかった、(3)火山ガスは大量に放出したが、火山灰はそれ程出さなかった、という場合があることがわかった。すなわち、南極氷床は過去の火山活動の規模と性質の記録者であることが明らかになった。 3.レーザーアブレーションICP-MS(LA/ICP-MS)を用い、XRF分析用に調製されたガラスビード試料についてLA/ICP-MSで微量元素分析が出来るようになった。しかし10μmサイズの微粒子の分析までは、到達できなかった。 4.国内外の火山灰試料の化学組成(主に微量元素組成)を機器中性子放射化分析法(INAA)で求めた。
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