研究概要 |
メゾスコピックな系には、溶質-溶媒分子系、吸着分子-表面系などのインターフェイス系、直鎖ポリエンなどの無限系のモデル、クラスターなど、数多くの化学的に重要な系が含まれる。本研究ではメゾスコピック系の定量的量子化学理論の開発とプログラムパッケージの開発をする事によって理論を計算機へ実装し、メゾスコピック系のab initio分子軌道計算を行うことを目的としている。本年度は、昨年度までの成果をもとに、これまで開発してきた理論的手法を土台にした適用可能な系の拡張、アルゴリズム、プログラムの整備、および、これまでとは異なった視点から新たに大規模系にアプローチする手法の探索を目的として研究を行った。 1.新しいMCSCF法であるstring product space SCF法、および、それを基礎とした摂動論の開発:昨年度提案したGMC-QDPT法では、必要な配置関数のみを用いることができ、CASのように多電子励起を含める必要がなく、より大規模な系に適用できる。しかし一方、一般化のため計算効率を犠牲にしている、恋意性が大きいという問題も生じた。そこで本研究では、CASの利点を引き継ぎ、かつ恐意性をできるだけ排除したSPS-SCF法およびそれを参照とするSPS-PTを提案した。 2.非直交Kohn-Sham DFT法:分子軌道の直交性の要請は,分子のある部位によく局在化した局在化軌道においても,他の重要でない部位にtailをもたらす。この小さな値を保持することは,大型の分子においては,大きな負担になり,理論の可能性を狭めている。非直交軌道を用いればtailは生じないことに着目し,非直交密度汎関数法PFMO-KS-DFTとその解法を開発して、この問題を解決した。 さらに、3.新しい多参照Brillouin-Wigner摂動論の開発、また、これまでの手法の応用である4.GMC-SCF/QDPTを用いたCT錯体における中性-イオン性相転移の解析、5.GMC-QDPT法による五員環化合物の励起状態の研究、6.長鎖ポリエンの電子状態の研究などを行った。
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