研究概要 |
(1)Dibenzoylmethane(DBM)の分子内水素結合に対する溶媒効果 DBMの水酸基に対する,H/D同位体シフト,重水素核の四極子結合定数,酸素-17-プロトン間の双極子-双極子相互作用などを,種々の溶媒,温度において決定した。四塩化炭素中,アセトニトリル中では,これらのパラメーターに有意の差異は認められなかったが,電子供与性の極めて強いDMSO中で,明らかなOH結合の伸長が認められた。プロトン移動ダイナミックスに関しては,反応による磁気的相互作用の揺らぎが小さいため,観測に有意の寄与は認められなかった。 (2)安息香酸二量体におけるプロトン移動速度 酸素-17-プロトン間の双極子-双極子相互作用に対する,分子回転とプロトン移動ダイナミックスの寄与を分離するため,広い粘度範囲(1cP-100cP)の炭化水素中での上記相互作用を抽出した。高粘度領域で,プロトン移動の寄与が認められ,その速度定数は,5x10^5s^<-1>と見積もられた。この値は,結晶中で,予想されたものに比べ,1,2桁小さく,溶液中での安息香酸分子間の配置の自由度の寄与が考えられる。 (3)N,N'-diphenyl-6-aminofulvene-1-aldimineの分子内水素結合に対する溶媒効果 窒素-15-プロトン間の双極子-双極子相互作用から,表題の問題を検討した。その結果,(i)プロトン移動ダイナミックスの寄与は認められなかった。このことは,本化合物中でのプロトン移動速度が,〜10^<11>s^<-1>よりも遅いことを意味する。(ii)アセトニトリルのような比較的電子供与性の強い溶媒中で,NH結合の伸長がみられた。この効果は(1)の場合に比べやや顕著であり,これは,両者の水素結合の強さの違いに起因する。
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