研究概要 |
ポテンシャル面は、電子の運動を論じる量子化学と原子核の運動を論じる反応動力学の橋渡しをする重要な役割を果たす。われわれは、エネルギーに関する座標微分を全く使わない方法として、内挿移動最小二乗法(interpolant moving least squares, IMLS)法とShepard内挿法を併用した方法(IMLS/Shepard法)を開発し、いくつかの系に応用してきた。最近、BettensとCollinsはBayesianの定理に基づいて重み関数を決める方法を提案している。この方法を用いて、比較的局所的な範囲と比較的広い範囲を表現する2つのパラメータを用いて、ポテンシャルの精度が改善されることを報告している。この方法をIMLS/Shepard法と組み合わせたときの効果について検討した。BattensとCollinsが用いてShepard法に対して良い結果を得ている2成分の重み関数を用いた計算を行った。Shepard法に対する結果は良好で、最もrms誤差が小さくなった。しかし、動力学計算においてエネルギーの保存が悪かった。急速な重み関数の変化のためであると考えられる。Bayesian解析にShepard法のみを組み合わせた場合のrms誤差の最小値が、IMLS/Shepard法での最小誤差に近いことから、最良の結果どうしを比べると、Shepard法とIMLS/Shepard法は精度があまり変わらないと考えられる。しかし、IMLS/Shepard法では、ポテンシャル面の微分の情報を必要としないので、同精度のポテンシャル面を得るのに必要な計算量ははるかに少なくてすむことは、IMLS/Shepard法の利点である。このほかにH$_4$系に対する計算を行い、IMLS/Shepard法の誤差がShepard法のみを使った場合に比べてはるかにポテンシャルエネルギーなどの誤差が小さいことがわかり、IMLS/Shepard法の有効性が確認された。
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