本研究は赤外-可視和周波混合法(SFG)に新たに円偏光二色性(CD)という概念を導入し、表面感度にして8桁以上の高感度の実現を目ざした新規な不斉分子検出法を提案する。併せて、不斉源を有する重要な有機化合物にSFG-CDを適用し、新規な分光法としての有用性を検討することを目的とする。 SFG-CDは現有するピコ秒YAGレーザーとLBO結晶を用いたOPG/OPAシステムを流用した。赤外光発生にはGeSeを用い、OPG/OPAの出力とYAGレーザーの基本波を取る事によって16μm程度までの赤外光をカバーする。出力レベルとしては80μJ/pulseの赤外光をえた。備品として購入したエネルギーメーターは赤外光の強度モニター用に用いる。又、消耗品の半分はGeSe結晶の購入に充てられた。結晶の回転角制御には現有のパソコンを用いた。 本年度の具体的な実験課題としては、先ず、SFGシステムの立ち上げを行いnoctadecyl trichrolosilane等の自己組織化単分子膜既知試料を用いた校正を行った。この分子は不斉源を有さないのでCDは観測されないが、この性質を利用してSFG-CDシステムの0点校正ができる。次に、我々のグループで合成した反強誘電性液晶の超薄膜を作製し、不斉炭素近傍のアルキル基などの特定官能基からSFG-CDシグナルの観測に成功した。此の実験から分子内の対称性の破れに関する定性的な理解を得られる。本成果は平成12年度の液晶学会にて報告した。
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