研究概要 |
(1)C_<60>-希ガス化合物の理論計算 固体C_<60>に吸蔵された希ガスとC_<60>との間に働く化学的相互作用を定量的に評価するためにC_<60>-希ガス化合物の理論計算を行った。C_<60>面心立方格子の八面体サイトに希ガス原子(RG)を1個置いたC_<60>(RG)、四面体サイトに1個置いたC_<60>(RG)_2、両方のサイトに1個ずつ置いたC_<60>(RG)_3のモデル構造を作成し、構造の最適化および電子状態計算を行い次のことが明らかとなった。C_<60>(RG)においては、C_<60>He,C_<60>Ne,C_<60>Arの各希ガス原子は電荷をもたず中性である。これに対して、C_<60>Kr,C_<60>Xeの希ガス原子はそれぞれ0.99,1.04の正の電荷をもつ。C_<60>(RG)_2においては、C_<60>Ar_2のAr原子にも0.02の正の電荷が出現する。C_<60>Kr_2,C_<60>Xe_2の希ガス原子の電荷はそれぞれ1.24, 1.28に増大する。C_<60>(RG)_3においては、八面体サイトと四面体サイトの希ガス原子の電荷はそれぞれC_<60>(RG)とC_<60>(RG)_2における値にほぼ等しい。また、5GPaの静水圧をかけるとC_<60>ArにおいてもAr原子が0.02の正の電荷をもつようになることも明らかにした。 (2)カーボンナノチューブへの希ガス吸蔵 C_<60>のような分子性結晶とグラファイトシートを筒状に丸めた形態をもつカーボンナノチューブ(CNT)との希ガス吸蔵特性の比較を行った。多層・単層とキャップの有無の組み合わせによる4種類のCNTを用いて希ガスの吸蔵特性を調べた。He, Ne, Arを接触させた試料において、化学的結合が支配的な高温領域で脱離ピークを観測した。また、多層、単層ともにキャップのある閉じたCNTの方が希ガスの吸蔵量が多いことがわかった。このことから、チューブ内は吸蔵サイトとしての寄与が少なく、むしろ両端のキャップあるいはそれに類似する部分で構成されるサイトが特異的な相互作用を示すことを明らかにした。
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