1.鞍部領域の相空間のトポロジーを考慮に入れた反応遷移における新しい動的選択規則を新規に開発した。この選択則は殆んどすべての自由度がカオス的であっても反応の「終状態」(もしくは「始状態」)はアプリオリに決まっていることを主張するもので、種々のエネルギー領域におけるアルゴンクラスターの異性化反応にその手法を適用し、軌道計算により得られた終状態をはば広いエネルギー領域において非常に高い確率で予測できることを示すことに成功した。現在、その研究成果をJ.Chem.Phys.に投稿予定であり、これまでの研究成果の総説執筆を依頼されており、近くAdv.Chem.Phys.において発表予定である。 2.principal component解析および埋め込み論を融合させて、"ランダム"な運動形態のなかから(局所的な)規則構造を抽出し、ダイナミックスの規則性とポテンシャルエネルギー面の局所幾何学との関係を解析する(前年度から開発している)汎用プログラムを46ビーズモデルに対して適用し、揺らぎの大きい10数成分の次元が相対的に低く、かつ転移温度では他の温度領域のそれに比べて顕著に小さく、転移温度領域のダイナミックスは非ブラウン運動的な規則性を保有する傾向があり、Garciaらによる酸化チトクロームcの水溶液中の蛋白揺らぎの異常拡散に対する理論的な裏づけを行った。ファネル・非ファネル型ランドスケープによる相違は、ファネル型のエネルギー地形のほうがフォルディングダイナミツクスをより幅広い温度領域に渡ってregularizeする傾向があることが具体的に示唆された。生物物理、Journal of physical Chemisty(共にinivited)に年度内に投稿する。
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