1.遷移動力学を記述する重要な少数自由度を抽出し、位相空間上の化学反応bottleneckおよび複雑な反応遷移過程を可視化する手法を新規に開発することに成功した。アルゴンクラスターの異性化反応にその手法を適用し、遷移状態領域にはエネルギーが増大するに従って、従来知られていなかった(位相空間の)反応座標と非反応性座標の間にbottleneckが形成され、それが反応の進行を阻害する方向に働くことを見出した。 2.鞍部領域の相空間のトポロジーを考慮に入れた反応遷移における新しい動的選択規則を新規に開発した。この選択則は殆んどすべての自由度がカオス的であっても反応の「終状態」(もしくは「始状態」)はアプリオリに決まっていることを主張するもので、種々のエネルギー領域におけるアルゴンクラスターの異性化反応にその手法を適用し、軌道計算により得られた終状態をはば広いエネルギー領域において非常に高い確率で予測できることを示すことに成功した。 3.principal component解析および埋め込み論を融合させて、"ランダム"な運動形態のなかから(局所的な)規則構造を抽出し、ダイナミックスの規則性とポテンシャルエネルギー面の局所幾何学との関係を解析する汎用プログラムを開発し、46ビーズモデルに対して適用し、揺らぎの大きい10数成分の次元が相対的に低く、かつ転移温度では他の温度領域のそれに比べて顕著に小さく、転移温度領域のダイナミックスは非ブラウン運動的な規則性を保有する傾向があること、ならびにファネル・非ファネル型ランドスケープによる相違は、ファネル型のエネルギー地形のほうがフォールディングダイナミックスをより幅広い温度領域に渡ってregularizeする傾向があることを具体的に示すことに成功した。
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