研究概要 |
遷移金属やランタノイド、アクチノイドを含む系を分子軌道法で取り扱うためには、全電子を取り扱う多電子理論は取り扱いが困難であり、化学的に不活性な内殻電子の影響を有効内殻ポテンシャル(effective core potential, ECP)で置き換えることが不可欠であった。これらの問題を解決するため、代表者(酒井)らはモデル・コア・ポテンシャル(Model Core Potential, MCP)法を開発してきた。MCP法は、(1)価電子軌道の節を表すことができる、(2)内殻ポテンシャルに相対論的効果の主要な部分(mass-velocityとDarwin term)を取り込んでいる、ことが特徴である。代表者(酒井)らはLi(Z=3)からRn(Z=86)までの全ての原子に対してモデルコアポテンシャル(MCP)を完成させた。化学反応や触媒反応を取り扱うには、ポテンシャル曲面上での平衡構造、遷移状態構造、基準振動や反応経路を決定する必要がある。 今回の科研費による2年間の研究により、汎用ab initioプログラムGAMESSにMCP法およびそのエネルギー勾配法のプログラムを移植することができた。このプログラムを使って、ランタノイドおよびアクチノイド化合物の電子状態および化学反応を取り扱うことが可能になった。我々は、(1)GdOの励起状態の電子状態、(2)ウランおよびネオジウム・ハロゲン化物の電子状態、の2つの研究を行った。これらの研究により、ランタノイドおよびアクチノイド化合物の励起状態、幾何構造、ランタノイド収縮、化学結合についての理論的研究を行う上で、MCP法が有効的であることを検証できた。汎用プログラム、"GAUSSIAN"へのMCPの移植は現在進行中である。
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