研究概要 |
HO-(CH_2)_n-OH型ジオールであるエチレングリコール(eg),1,3-プロパンジオール(prd),1,4-ブタンジオール(bud),および1,5-ペンタンジオール(ped)と水との混合溶液に対し、示差走査熱量測定法(DSC)、広角X線散乱法(LAXS)、中性子小角散乱法(SANS)、^<17>O-NMR緩和法を用い熱的性質、ミクロスコピック構造およびメソスコピック構造ならびに水分子のダイナミクスを研究した。DSC測定は、炭素鎖偶数のジオールと水との混合溶液では、ジオール、水、あるいはその混合物と考えられる結晶が凝固しやすいのに対し、炭素鎖奇数のジオールの場合、容易に過冷却状態に保たれることを示した。炭素鎖偶数のジオールの場合、その結晶はジオール分子同士が連続的に会合した構造をとることが明らかにされており、このことが混合溶液を凝固しやすくしている原因であると考えた。室温におけるeg-水混合溶液に対するSANS実験では明確な小角散乱スペクトルは観測されず、エチレングリコール分子と水分子は均一に混合することが示唆された。また、濃縮H_2^<17>Oを添加して調整したegおよびprd-水混合溶液の^<17>O-NMR緩和時間T_1を測定した。室温でeg-水およびprd-水混合溶液に対するT_1値はモル分率の増加にともない単調に減少し、水分子の回転運動が徐々に制限されていくことがわかった。モノオールであるメタノールおよびエタノールの場合、水クラスターからアルコール鎖状クラスターへ構造変化するモル分率でT_1値のモル分率依存性に明確な変曲点が現れる。このことから、ジオールでは特定のモル分率を境界に急激な構造変化が起こらず、ジオール濃度の増加とともにジオール分子と水分子が比較的均一に混合していくと考察した。すなわち、NMR緩和法による水分子のダイナミクスに関する結果はSANS法により明らかになったメソスコピック構造の結果と合理的に一致した。この混合の均一性が過冷却になりやすい原因であると結論した。 現在、この補助金により製作した高圧NMRセルの圧力調整を行い、高圧下におけるジオール-水混合溶液の研究に着手している。
|