自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission: ASE)は、反転分布を持つ媒質中において励起状態からの自然放射光が媒質自身の誘導放射過程によって増幅された光である。つまり、反転分布媒質は外部入力光の増幅器として作用することができる。もし外部入力光として波長可変なレーザー光を用い、gainが十分に大きければ励起状態間のレーザー分光計測が可能になると考えられる。 CO分子を230nm付近の紫外レーザー光で二光子励起しB^1Σ^+(v=0)を生成する。このときB(0)とA^1П(v)の間には反転分布が形成され、B(0)→A^1П(v)に対応する緑色のASEが肉眼でも容易に確認できる。このASEが検出できないくらいまでポンプレーザー光の強度を低くした状態で微弱なシード光(通常μJ/pulse以下)を導入し、B(0)→A(4)に対応する607nm付近で波長を掃引する。透過してくるシード光の強度を波長の関数として計測したところ、共鳴波長で最大gain約100を達成した。誘導放射過程を利用した分光法としては、誘導放射ポンピングすなわちSEPが有名で、多くの分子系に適用されている。ほとんどの分光計測ではSEPを検出する方法として中間状態の占有数の誘導放射による減少をモニターする。すなわち中間状態からの蛍光信号あるいはレーザーによるイオン化信号の減少分を検出するわけだが、通常目に見える占有数の減少を引き起こすためにはDUMP光強度を相当強くする必要がある。gainを検出する本法(transient gain SEPを称されることがある)の利点として、微弱なシード光を用いているためバックグラウンドがほとんどない、また蛍光収率が低い前期解離性準位を中間状態として設定しうる等がある。
|