研究概要 |
シガトキシン類は,珊瑚礁周辺に棲息する魚介類によって引き起こされる食中毒"シガテラ"の原因物質であり,フグ毒テトロドトキシンの数十倍も強力な毒性(マウス致死毒性,0.35〜1.3μg/Kg)を有する。これらの分子が神経細胞膜にある電位依存性ナトリウム・チャネル(膜タンパク)に特異的に結合することに起因する。天然からは極微量しかサンプルが得られないので詳細な研究が滞っている現状にあり,化学合成によるサンプルの供給が切望されている。本研究は,分子レベルでの活性発現機構を解明に役立てることを目的に,ポリ環状エーテルである微量天然毒シガトキシンの全合成研究を行った。本研究者は,オレフィンメタセシス反応を鍵反応とした多環状エーテルの短段階収束合成法利用し,昨年度までにシガトキシンCTX3Cの前駆体の合成に成功した。本年度は,最終段階である脱保護を行ったが,思わぬ副反応が伴い困難に直面した。しかしながら,反応条件を厳密に設定することで,分子量千をこえる複雑な巨大ポリエーテル分子であるシガトキシンCTX3Cの世界最初の全合成に成功した。この結果は米国の有名雑誌"サイエンス"(11月30日号)に掲載され,朝日新聞,毎日新聞をはじめ多くの全国紙でも報道された。また,アメリカ化学会の機関紙"Chemical & Engineering News"にも紹介され,"Chemistry Highlights 2001"で"2001年における有機化学の重大発展(4件)"の一つに選ばれた。この業績に対しして,本研究者は2001年度有機合成化学奨励賞を与えられた。
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