研究課題
前年度に1,2,4,5-テトラキス(ジメチルシリル)ベンゼンを構成単位とする環状四量体と環状五量体を合成し、環状四量体の環の内部は空孔のままであるが、環状五量体は空孔内にベンゼンを取り込むことを報告した。このことは、ベンゼン程度の大きさの分子を包接するためには、空孔の直径が環状四量体(7.3【。!A】)程度では不十分であり、環状五量体(11【。!A】)程度の大きさが必要であることを示唆している。そこで、環状四量体のケイ素-ケイ素結合に酸素原子を挿入することによって空孔を拡大し、包接作用を示すかどうか検討した。環状四量体を過剰量のトリメチルアミンオキシドと反応させると、8個のケイ素-ケイ素結合がすべて酸化され、4個のベンゼン環が8個のシロキサン鎖で架橋されたシクロファンが91%の収率で得られた。このものをベンゼン中から再結晶すると、分子内の空孔にベンゼンを1個取り込んだ包接化合物が得られた。X線結晶構造解析から、空孔の直径は約10.4【。!A】であり、ベンゼンはシクロファンの環平面に平行に包接されていることがわかった。また、ベンゼンは空孔内に強く包接されており、容易には脱離しない。この結果はやや大きい空孔をもつ環状五量体に包接されたベンゼンが空気中ではすぐに脱離するのと対照的であり、空孔の直径の役割が大きいことを示している。さらに、環状五量体と環状六量体についてもトリメチルアミンオキシドで酸化し、対応するシロキサン架橋のシクロファンを高収率で合成した。このものについてはさらに大きな空孔をもつと考えられ、その包接作用に興味が持たれる。
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