12年度の研究では、アクアヤマイシン自身の合成を検討し、第一世代の全合成経路を開発することができた.この合成は、未だきわめて多くの課題を含むものであるが、この化合物が構造決定されて以来30年間、多くのグループが全合成を競ってきた中での初の全合成である. はじめに、官能基化されたフェノール誘導体とD-オリボシルアセタートを用いるO→C-グリコシド転位反応により、位置および立体選択的にC-グリコシド結合を形成した後、フェノール上の官能基を適切に変換し、これから対応するベンザインを発生させた.このベンザインとケテンシリルアセタールとの[2+2]付加環化反応は収率よく進行し、対応するベンゾシクロブテン誘導体を得ることができた.この化合物の四員環部を酸化的に環拡大させ、さらに官能基を経て、C-オリボシド構造を備えた3-(フェニルスルホニル)フタリド誘導体を合成することができた. 一方、6位に5炭素の側鎖を備えた2-シクロヘキセノン誘導体を合成し、これと上述のフタリド誘導体のHuser環化反応によってBCD環に相当する三環化合物を合成した.最後に、B環上のケトンと側鎖末端のアルデヒドとのピナコール形成反応によってA環部を構築し、全合成を達成した. この成果を足掛かりとし、より優れた第二、第三世代の合成を目指すとともに、より高次な構造を持つ天然型アクアヤマイシン類の合成、さらには生理活性の改善を目的とした、非天然型ハイブリッドの創製に向けて研究を進める予定である.
|