研究概要 |
12年度の研究では、アクアヤマイシン自身の合成を検討し、その全合成経路を開発した。また,13年度の研究では、AB環部に相当する合成中間体およびCD環部に相当する合成中間体の合成法に改良を加え、これらを容易に、十分量供給することが可能となった。これにより、より高次な構造を持つアクアヤマイシン類縁体を合成するための状況が整った. 本年度の研究では、糖部分の構造の異なる生理活性アナログの創製を念頭に置き,C-グリコシド部位にオリボースに代わり,アミノ糖を導入する手法の開発を目指し,検討した。 後にアミノ基へと変換可能な官能基としてアジド基を持つ糖供与体の,O-C-グリコシド転位反応によるC-グリコシド化を検討した。これまでにO-C-グリコシド転位反応に有効性が認められたルイス酸反応剤はどれも,この場合には有効でなかった。そこで,これまで利用されたことのない反応剤を広く検討した結果,スカンジウム(III)トリフラートがきわめて有効であることを見出した。この反応剤は,窒素官能基を含む糖供与体のO-C-グリコシド転位反応を可能にする,初めてのものであるばかりでなく,触媒量での反応を実現する点でも重要である。また,窒素官能基を含む糖供与体ばかりでなく,むろん中性糖のO-C-グリコシド転位反応にも活用できる。 アミノ糖は,種々の生理活性グリコシドにおいて,しばしばその活性の本質を担っている。しかし,これまでアミノ糖供与体をC-グリコシド化するための有効な反応はまったく無かった。ここで開発した方法の応用により,そういったアミノ糖を持つアクアヤマイシンアナログの創製が可能になるものと期待できる。実際,抗腫瘍性のアリールC-グリコシド抗生物質であるラビドマイシンを構成するラビドサミンのC-グリコシド化に成功した。
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