1.安定型ビスマスイリドの新しい合成法を開発し、その特異な構造および反応性について明らかにした。具体的には、窒素上にアシル基もしくはスルホニル基を有するビスマスイミドのアセチレンジカルボン酸エステルへのマイケル付加を利用して、高い安定型を持つビスマスイリドを合成した。得られた化合物のX線結晶構造解析を行なった結果、イリドの安定性が高度に共役したアルキリデン骨格に由来することが明らかとなった。さらに、高温ではイリドの熱分解が進行し、分子内環化によりオキサゾール環を形成することを見いだした。本反応ではビスムトニオ基の高い脱離性が反応の推進力となっており、15族の中におけるビスマスの特異性が顕著に認められる。 2.アルキニルビスムトニウム塩へのスルフィナートイオンのマイケル付加により、ビニリデン型ビスマスイリドが発生することを見いだした。興味深いことに、溶媒の種類をかえることでこのイリドの後続反応経路を制御することが可能であり、本反応がシクロペンテン環の構築あるいはビニルスルホンの合成法として利用できることを明らかにした。 3.ビスマスイミドの反応性を調べる目的でビスマスオキシドとアミドの縮合を検討した結果、本反応が効率良いイソシアナート合成法となり得ることを見いだした。すなわち、5価ビスマスが酸化剤として作用しており、現在合成法としての適用範囲を検討中である。
|