5-tert-ブチm-キシレンを原料として6段階で分子内に2個の10-S-3テトラアザチアペンタレン環をもつ新規化合物(1)を合成した。化合物1の超原子価硫黄のアピカルおよびエクアトリアル結合特性を用いて諸種の大環状化合物への変換方法を確立した。1と剛直なp-キシリレンジイソチオシアナートや5-tert-ブチルm-キシリレンジイソチオシアナート類との反応では分子間反応がおこり積層型の大環状化合物(2)が高収率で得られることがわかった。一方、長鎖のエーテル結合をもつジイソチオシアナート類との反応では、選択的に分子内環化反応がおこり分子内に2個のクラウンエーテル部位をもつ大環状化合物(3)が得られた。化合物3をアルカリ加水分解するとC=S^<IV>部位の脱離により環拡大し、チオ尿素部位とエーテル結合鎖を併せもつ大環状化合物(4)がえられた。化合物4はリン酸アニオンレセプターとして有効であり、1:2の錯形成をすることがわかった。また3や4はカチオンに対しすぐれた補足能を有することがわかった。化合物4はアニオンやカチオンいずれにも分子認識能を示す極めて珍しい性質があることがわかった。
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