研究概要 |
一般に有機合成反応は有機溶媒中で行われる。本研究では,有機溶媒を用いることなく,水中において進行する炭素一炭素結合生成反応を開発することを目的として研究を行った。 シリルエノラートのアルジミンに対する求核付加反応であるマンニッヒ型反応が,触媒量(10mol%)のブレンステッド酸触媒により含水溶媒中で効率良く進行し,対応するβ-アミノカルボン酸誘導体が効率良く得られることを見いだした。溶媒系として,1)含水有機溶媒中または,2)界面活性剤(40mol%)共存下有機溶媒を用いない水溶媒中の2種類の系を見いだした。また,水中の反応と含水有機溶媒中での反応では,得られるβ-アミノカルボン酸誘導体のジァステレオ選択性が大きく異なることも明らかにした。求核試薬の置換基を選択することにより,シン体とアンチ体を高い立体選択性で作り分けることにも成功した。こうして得られたβ-アミノエステルは塩基処理することにより速やかに閉環反応が進行し,良好な収率でβ-ラクタムへと変換することができた。さらに,界面活性剤の当量についても詳細に検討した結果,求核試薬として反応性の高いケテンシリルアセタールを用いると,界面活性剤をわずか1mol%用いることにより,マンニッヒ型反応が効率良く進行することがわかった。 また,ケテンシリルアセタールの水中における安定性についても精査し,水溶液中においても反応に用いるに十分な安定性を示すことを明らかにした。
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