研究概要 |
本研究では,白金II価錯体がそのaxial方向で他の金属イオンに配位した錯体,特に,架橋配位子等の他のサポート相互作用を持たない錯体の合成を目指すとともに現在得られている一次元錯体[{Pt(phpy)_2}-{Ag(aceton)}]_n(ClO_4)_n(Hphpy=phenylpyridine)およびその部分酸化体等について電気伝導度の測定を行うことを目的としている。これまでアクセプターとしてAg^+,Cd^<2+>等の置換活性なイオンを用いてきたため生成した溶液中で錯体が解離していた。本研究ではこれを防ぐためアクセプターとしてinertなRu(II),Pd(II)等の錯体を用いることを試みたが単離同定には至らなかった。そこでアクセプターを単核錯体とせず,axial位のルイス酸性の強いRh複核錯体,[Rh_2(CF_3COO)_4],を用いて合成を行ったところ両側から炭素配位白金錯体が配位した[Pt(bpy)Me_2]_2[Rh_2(CF_3COO)_4]が得られ,X線構造解析により構造を決定した。Pt-Rh距離は2.767(1)Åであり比較的強い結合が形成されたことを示している。また,Rh-Rh距離は2.449(1)Åと若干長く,これはPt配位によるtrans影響と考えられ,PtがRhに強く配位していることを示している。しかし,この錯体は溶解度が低いため金属核NMR等の溶液中の性質を調べることが困難であるため,現在白金配位子上のMeをBuに変えたり,白金配位子として[Pt(phpy)_2]を用いる等の試みを行っている。 導電性一次元錯体については,新たに[Pt(acac)_2][Ag(py)_2]を合成,構造解析した。この錯体をヨウ素雰囲気下において部分酸化したところ結晶の色が淡黄色から黒褐色に変化した。その電気伝導度を測定したところ,小さいながら10^<-5>Scm^<-1>の電気伝導度を示した。
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