研究概要 |
1.cis,cis-1,3,5-トリアミノシクロへキサン(以後TACHと略す)を配位子とするCu(II)及びZn(II)錯体を合成し、X線構造解析した。どの錯体でも歪んだ三方両錐構造を取り、TACHはM-N結合の一つがやや伸びた三座配位子として作用した。なお、ペプチドは末端アミノ基とアミドのC=O酸素とでM(II)TACHにキレート配位することが分かった。 2.M(II)TACH錯体のDNA及びジペプチドの加水分解能は、Ni(II),Mn(II),≦Zn(II)≪Cu(II)で、銅(II)錯体が高活性を示した。GlySerの場合、-CH_2OH基の反応への関与が示唆された。 3.Cu(II)TACH錯体のpH滴定法によるspeciationを検討した。pH6-9では主に[CuTACH(H_2O)_2]^<2+>種、PH8-10では[CUTACH(H_2O)(OH)]^+種及び[Cu_2TACH_2(OH)_2]^<2+>(ダイマー種)として存在することを突き止めた。ジペプチドの存在下では、酸性では[Cu(pep)(H_2O)_n]^+や[Cu(pep)_2]^<2->種、pH7-10で[Cu(TACH)(pep)]^+(アミドC=O配位)、pH9以上で[Cu(TACH)(pep)](アミドN^-配位)種等として存在することが分かった。 4.φX-174DNAのformIからformIIへの加水分解速度を測定し、pH9.5では反応が半減期約5分で進行した(加速効果=1×10^8倍)。反応速度のpH錯体濃度、及びDNA濃度依存性および錯体とDNAとの結合定数から、反応は協奏的なM-OH機構で進行することが推定された。 5.ジペプチドの加水分解速度を測定し、反応が錯体によって20-60培加速されることが分かった。反応速度のpH、pep濃度、及び錯体濃度依存性から、反応は[CuTACH(pep)]^+(pepはNH_2とアミドC=O酸素配位)を中間体として経由することが分かった。
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