研究概要 |
本研究では、機能性金属錯体の創製を目的とし、以下の研究を重点的に行った。 1)クロム(III)-ニッケル(II)イオンを含むヘテロニ核金属錯体の磁気的相互作用の制御:bis(n-hydroxo)架橋を有する一連の異種二核クロム(III)-ニッケル(II)錯体([(phen)_2Cr(μ-OH)_2Ni(Me_n-tpa)]^<3+>、tpa=tris (2-pyridylmethyI) amine,n=0-3,phep=1,10-phenanthroline)の合成に成功し,それらの構造と磁性について調べた。その結果,クロム(III)-ニッケル(II)イオン間に働く磁気的相互作用は,配位子にメチル基を導入するに従って,弱い反強磁性相互作用から比較的強い強磁性相互作用へと段階的に変化することを見出した。この磁気的相互作用の変化は,メチル基の立体的・電子的効果によるニッケル(II)部のd軌道の段階的なエネルギー変化によることを明らかにした。 2)モノオキシゲナーゼ活性を有する二核銅(III)オキソ錯体の合成:三脚型四座配位子Me_2-etpy(Me_2-etpy(bis(6-methyl-2-pyridylmethyl)(2-pyridylethyl)amine)を含む銅(I)錯体([Cu(Me_2-etpy)]^+)を用いて,アセトン中,-80℃で酸素分子との反応によりbis(μ-oxo)二核銅(III)錯体([Cu_2(μ-O)_2(Me_2-etpy)_2]^<2+>)を合成し,その結晶構造解析に成功した。さらに,このbis(μ-oxo)二核銅(III)錯体のオキソ基は,配位子のメチレン基の水素原子の引き抜きにより、酸化的N-脱アルキル化反応を引き起こすことを見いだし,このメチレン基の水素引き抜き反応は,オキソ基との隣接効果によることが明らかとなった。
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