加水分解酵素であるウレアーゼの活性部位には、2つのニッケルイオンが存在し、カルバメートによって架橋された複核構造を有している。ニッケルイオンは、他の金属イオンによって置換することが可能であり、これまで、マンガン、コバルト、亜鉛イオンなどに変えた金属置換ウレアーゼの調製に成功している。また、酸化酵素の中には、メタンモノオキシゲナーゼ、チロシナーゼやカタラーゼのように、金属複核活性構造を持つものが知られており、その酵素メカニズムに関する研究が行われている。本研究では、ウレアーゼの活性部位を反応コアとした新規酸化酵素の創製を試みている。まず、金属置換ウレアーゼの調製を行い、今回新たに、鉄置換ウレアーゼの調製に成功し、分光学的性質を明らかにした。さらに、金属置換ウレアーゼと過酸との反応を検討したところ、鉄置換ウレアーゼ、銅置換ウレアーゼでは、残念ながら、反応に伴うスペクトル変化が小さく、反応生成物の同定ができなかった。そこで、分子量の小さい他の菌種由来のウレアーゼに変更し、その遺伝子組み換え体を新たに作成した。その結果、従来の分子量24万から分子量6万への単一サブユニットのウレアーゼを得ることに成功した。現在、そのサブユニットの金属置換を試みている。また、ウレアーゼの活性部位の複核構造生成反応時に、近傍リジン残基と二酸化炭素の反応により、カルバメート架橋が生じることが知られている反応に対して、銅複核錯体によって反応メカニズムを解明した。このことは、活性部位構造制御が可能になることを意味している。本研究は、次年度にも引き続き行われ、加水分解酵素の活性部位構造の改変による新規酸化酵素を創り出すことによって、酸化酵素メカニズムの解明を目指すものである。
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