ホスファイド-ドナー多座配位子をもつ前周期遷移金属錯体の合成、構造、反応性

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12640539
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 中沢 浩 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00172297)
• 研究分担者: 久保 和幸 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90263665)
• キーワード: ペンダント配位子 / ホスファイド錯体 / ジアリル錯体

研究概要

平成12年度の研究で、MCl_4(tht)_2(M=Zr, Hf ; tht=tetrahydrothiophene)とXC_5H_4CH_2CH_2P(H)Mes(X=SiMe_3,Sn^nBu_3)との反応で、二級ホスフィンペンダントCp錯体である{η^5:η^1-C_5H_4CH_2CH_2P(H)Mes}MCl_3(tht)が合成できることを明らかにした。
この成果を基にして、平成13年度はこのホスフィン錯体をホスファイド錯体へ変換する反応を検討した。トリクロロ錯体をホスファイド錯体へ変換する反応はうまく進行しなかったので、まずClのアルキル化を行った。その結果1.5当量のMg(CH_2Ph)_2(thf)_2を反応させると、トリベンジル錯体が生成することが分かった。しかし、この錯体のリン部分は中心金属に配位していないことが分かった。そこで、この錯体を80℃で加熱すると、金属上のベンジル基とリン上のHがカップリングしてトルエンが脱離し、ジベンジルホスファイド錯体が生成することが分かった。しかし、この錯体は単離には至らなかった。これに対して、エーテル中で3当量のアリルグリニヤ試薬を反応させると、ホスファイドが配位したジアリル錯体{η^5:η^1-C_5H_4CH_2CH_2PMes}M(C_3H_5)2が褐色粉末として単離できることが分かった。
次に、この単離したホスファイド錯体とアルコールとの反応性を検討した。嵩高い2,6-di^tBu-phenol(HOR)との反応では、まずM-P結合にO-Hが付加して{η^5-C_5H_4CH_2CH_2-P(H)Mes}M(C_3H_5)_2(OR)が生成し、続いてプロペンが脱離して{η^5:η^1-C_5H_4CH_2CH_2PMes}M(C_3H_5)(OR)が生成することが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] K.Kubo: "Reaction of HP(OC_6H_4NH)_2 with n-BuLi and then with EX(E=Me, SiMe_3, GpMe_3, SnMe_3, Cp(CO)_2Fe, Cp(CO)ICo ; X=Cl, I), Leading to Selective Deprotonation and Substitution"Bulletin of the Chemical Society of Japan. 74・8. 1411-1415 (2001)
• [文献書誌] H.Nakazawa: "Metallaphosphorane Chemistry : Preparations, Structures, and Reactivities"Bulletin of the Chemical Society of Japan. 74・12. 2255-2267 (2001)
• [文献書誌] H.Nakazawa: "Syntheses, Structure, and Berry Pseudorotation of Ruthenium-, Iron-and Cobalt-Phosphorane Complexes"Journal of Organometallic Chemistry. (in press). (2002)
• [文献書誌] T.Ishiyama: "Synthesis of Group 4 Transition-metal Complexes Bearing a Secondary Phosphine Pendant Cyclopentadienyl Ligland"Journal of Organometallic Chemistry. (in press). (2002)
• [文献書誌] K.Kubo: "Syntheses and Crystal Structure of P-Transition-Metalated Iminophosphoranes, Cp^*(CO)_2M{P(NPh)(OMe)_2}(M=Fe and Ru)"Organometallics. (in press). (2002)