研究概要 |
多核金属錯体において、2つの金属が同時に基質と相互作用できる反応サイトは、複数の金属による新たな反応を開発できる場所として関心を集めている。本研究では、2つの平面4配位金属錯体から成る2核錯体を強制的に折れ曲がり型にすることで、2つのメタルのアキシャル配位座が同時に相互作用できる空間を作り出した。 我々は、d^8の電子配置をもつ10族のPd(II),Pt(II)および9族のRh(I)を中心金属に選んだ。架橋原子にはホスフィドを用い、2つの架橋ホスフィド配位子をアルキル鎖で結ぶことで、強制的に折れ曲がり型にした。合成では、まず単核の錯体に架橋配位子となるRHPCH_2CH_2PHR(R=Me,Ph)を配位させ、Na_2CO_3を用いてリン上のHをプロトンとして引き抜き、そこへ第2のメタルを結合させた。最初のメタルと第2のメタルを変えることにより、この方法は、異核の2核錯体の合成にも適用できた。種々のPd(II),Pt(II)の錯体のうち、対イオンをCl^-,I^-,B(3,5-(CF_3)_2-C_6H_3)_4^-としたものの構造をX線構造解析により決定した。その結果、期待どおり2つの4配位平面が約120゜の折れ曲がり角を成していることが判った。さらに、Pd(II)の同核2核錯体で対イオンがCl^-の組み合わせでは、Cl^-が2つのPd(II)と同時に相互作用できる空間を占めていることが判った。
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