研究概要 |
昨年度、無水塩化金(III)と種々の芳香族炭化水素との反応からのアリール金(III)錯体の合成とX線結晶解析による構造決定を行った。その結果、無水塩化金(III)による芳香族炭化水素のC-H結合の活性化は位置特異的に、また求電子的に進行することが明らかとなった。また、得られたアリール金(III)錯体と不飽和化合物との反応を予備的に行った。 本年度は、アリール金(III)錯体[AuCl_2Ar(2,6-lutidine)](Ar=phenyl,2,5-xy1yl)と不飽和化合物との反応を詳細に検討した。先ず、アルケンであるスチレン、メチルビニルケトンとの反応を検討したが、パラジウム(II)アリール錯体とは異なり全く反応が進行しないことがわかった。次に、アルキンであるジフジフェニルアセチレン、アセチレンジカルボン酸ジメチル、との反応を検討した。内部アルキンであるジフェニルアセチレンとアセチレンジカルボン酸ジメチルとでは何らの反応も起こらず、原料が回収された。一方、末端アルキンであるフェニルアセチレン、1-ヘキシン、t-ブチルアセチレン、トリメチルシリルアセチレン、プロピオール酸メチルでは反応が進行することがわかった。フェニルアセチレン、1-ヘキシン、t-ブチルアセチレン、トリメチルシリルアセチレンでは、アルキンのアリール化反応が進行し、例えばフェニル金(III)錯体を用いた場合は、フェニルアセチレンからジフェニルアセチレンが生成した。また、プロピオール酸メチルとではヒドロクロル化反応が進行し、ケイ皮酸メチル誘導体ArCH=CCl(CO_2Me)が生成することがわかった。更に、アルキンのアリール化反応、プロピオール酸メチルのヒドロクロル化反応は、アリール金(III)錯体を単離しなくてもin situで調製したアリール金(III)錯体を用いても進行することがわかった。これらの触媒反応を検討するにはまだ至っていない。
|