研究概要 |
非ヘム金属酵素であるメタンモノオキシゲナーゼ(MMO)は、温和な条件でアルヵンを酸素化しアルコールとすることが知られており、MMOをモデルとする遷移金属錯体触媒が次世代のすぐれた低エネルギー消費型酸素化触媒として期待されている。一方、金属錯体の自己集合により、容易に大環状あるいはかご型超分子錯体を形成させ、その空孔内に各種有機分子をゲストとして取り込むことができる。そこでこのホスト多核錯体に、我々がこれまでMMOの機能モデルとして研究してきた、アルカン類などの基質を酸化する触媒作用を有する単核ルテニウム錯体を組み込むことにより、酵素と同じく基質取り込み能力を持ち効率的にアルカン類のヒドロキシル化を行う、自己集合型大環状多核錯体モノオキシゲナーゼモデルを実現しようというのが本研究の目的である。 これまでの研究で、あらかじめ4,4'-ビピリジンを配位させたビス(ビピリジン)ルテニウム錯体と(エチレンジアミン)パラジウム錯体を自己集合させることにより、酸化触媒能を持たない大環状Ru2-Pd2ヘテロ四核錯体が生成することが確認されている。そこで初年度は、これまでの研究で比較的高い触媒活性を示したトリス(1-ピラゾリル)メタン(tpm)を含むルテニウム錯体を同じ手法で自己集合させ、大環状Ru2-Pd2ヘテロ四核錯体に導入することを試みた。 まずクロロビス(4,4'-ビピリジン)(tpm)ルテニウム錯体を合成し、これと[Pd(en)(N03)2]錯体を水/エタノール中で自己集合させたところ、そのNMRスペクトルからオリゴマーを含む複数の成分の生成が見られた。そこで次に1-アダマンタンカルボン酸存在下に自己集合させたところ、目的物と思われるピークのみが観測された。1-アダマンタンヵルボン酸がヘテロ四核錯体の空孔に内包されたため、大環状錯体のみが得られたものと考えられる。同様にして、白金錯体を用いて大環状Ru2-Pt2ヘテロ四核錯体の合成も行った。今後これらの錯体の性質、各種の有機基質との会合定数、触媒的酸化反応の検討を行う予定である。
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