研究概要 |
外圏イオンを変えると固体状態の色が変わることも知られているニトロシルペンタアンミンクロム錯体[Cr(NO)(NH_3)_5]^<2+>(A)に関して、昨年度は三種の錯体ACl_2、ACl(ClO_4)、A(ClO_4)_2のX線構造解析を行い、水素結合の存在と結晶の色の関係を推定するとともに、Aの最適化構造をab initio計算で求めた。今年度は、新たに、A(PF_6)_2およびACl(PF_6)の合成に成功し、それらの結晶構造を明らかにするとともに、一連のニトロシルクロム錯体の固体反射スペクトルを測定し、ニトロシル配位子の酸素原子と最隣接の錯体のアンモニア配位子との間の水素結合が色の変化の原因であることを確認した。かさ高い対イオンは、錯体Aの間隔を押し広げて、その相互作用を弱める傾向が見られるが、A(PF_6)_2に見られるように、対イオンPF_6は比較的大きくても、錯体A間に強い相互作用が存在する場合は、結晶の色は赤色を示す。錯化合物、色(固体反射極大nm)、水素結合長(Å)の関係は以下の通りである: A(PF_6)_2,赤(579),2.409;ACl_2,橙(588),2.749;ACl(ClO_4)赤紫(598),3.127;ACl(PF_6),茶褐(603),3.262;A(ClO_4)_2,深緑(623),3.595。 なお、ニトロシルペンタシアノクロム錯体[CrNO(CN)_5]^<3->、シアノペンタアンミンクロム錯体[CrCN(NH_3)_5]^<2+>および二酸素ペンタアンミンクロム錯体[CrO_2(NH_3)_5]^<n+>(未知、n=0,1,2)のab initio計算についても検討中である。
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