研究概要 |
1.振動せん断流中における強磁性コロイド分散系の動的特性と凝集構造との関係を,ミクロな立場から明らかした.せん断流の方向が周期的に逆転する振動せん断流の場合,たとえ振幅が小さくても,粒子が密に配置した太い鎖状クラスタは比較的大きな影響を受ける.振動せん断流のずり速度の余弦関数状の変化に対して,太い鎖状クラスタの流れ方向への傾斜は位相遅れが生じるが,この位相遅れと粘度および垂直応力係数の位相遅れとは強い相関がある.粘弾性的な特徴は太い鎖状クラスタの構造と密接に関係しているので,太い鎖状クラスタが安定に保持されるような角速度が小さい場合,粘弾性的な特徴が顕著に現れる. 2.単純せん断流中における強磁性棒状粒子の配向分布とレオロジー特性を検討した.磁気力の影響が顕著な場合ほど,粒子の配向は鋭いピークを有するようになるが,その向きは,せん断流が支配的な場合の流れ方向から,磁場の増大とともに磁場方向へと移動する.せん断流だけでは強磁場下におけるような粒子配向の鋭いピークは得られない.せん断流に対して磁場の影響が顕著になるほど,粒子は磁場方向へ配向する割合が著しくなるので,流れ場中で大きな抵抗となり,粘度の著しい増加を引き起こす.長い棒状粒子の磁場方向への配向が,流れ湯中で大きな抵抗となるので,粒子のアスペクト比が大きくなるほど,より大きな粘度増加を与える. 3.非希釈コロイド分散系のシミュレーションに際して,計算時間の大幅な短縮化が計れる新しいストークス動力学法の構築を試みた.単純せん断流中における凝集構造と粘度に着目し,実際にシミュレーションを行うことにより,本方法と従来の力加算近似による方法との比較検討を行った.初期状態からの推移特性に関して,従来の方法による値と非常によく一致する.また,2体相関関数および粘度の結果から,定常状態においても,本cluster-basedストークス動力学法は従来の方法による結果とほぼ一致する結果を与える.cluster-based法による計算時間は,従来の方法に比べて約1/14から1/70倍程度で済み,圧倒的な計算時間の短縮化が計れる.以上より,N=1000やN=10000のような大規模系を対象とせざるを得ない強磁性コロイド分散系のミクロ・シミュレーション法として,本cluster-basedストークス動力学法は,従来の方法に比べて圧倒的に優れていることが結論づけられる. 以上の結果より、本研究の成果はコロイド科学,特に物理工学の進展に大きく貢献するものである。
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