研究概要 |
本年度は、レーザー電気炉装置を用いて、フラーレン類や単層ナノチューブ類の生成条件下における炭素微粒子の時間分解発光測定およびイメージング測定を行った。具体的には、フラーレン類や単層ナノチューブ類を生成する条件下で、蒸発用パルスレーザーのタイミングを時間の原点にとり、レーザー蒸発直後に飛び出す炭素微粒子の発光像を照射後の時間の関数として、レーザーの光軸と垂直方向に設置したイメージ増感型CCD(ICCD)カメラ(Princeton Instruments,PI-MAX)を用いて撮影した。またカメラの前に干渉フィルターを置き、C_2(a_3Π_u)分子を励起するレーザー光を照射して、C_2分子が生成する領域の時間的・空間的発展について調べた。これまでに、フラーレン類が生成するような高温雰囲気下の条件では、蒸発用レーザー照射後約400μ秒後に、フラーレンの生成に密接に関係すると考えられる黒体輻射発光の再増加現象が観測されていたが、今回の実験で得られたC2分子についても、フラーレン類が生成する条件下においては、400μ秒後にその数が再び増加していることが分かった。また雰囲気温度が下がるにつれて、その増加の傾向はより小さくなることも分かった。これらの実験事実は、フラーレンが生成する再際にはある時間領域において発熱過程が重要や役割を果たしていること、またその際にC2分子が新たに生成されていることを示している。このことから、フラーレン類の生成にはより小さなクラスター間、あるいはクラスター内での結合生成が起こり、その際に輻射やC2解離が起こっていることが強く示唆された。
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