研究概要 |
フラーレンや単層カーボンナノチューブの生成過程を理解するためには、その生成過程において炭素微粒子や金属微粒子がどのような役割を果たしているかを調べることが重要である。本研究計画により、以下に述べるような実験的知見を得ることができた。 (1)高温電気炉レーザー装置を用いてフラーレンを生成する場合には、生成の主要な部分が時間スケールにして約1ミリ秒であること、またその際に発熱反応が起きていることが、高速ビデオカメラを用いた撮影により明らかになった。更にその同じ時間領域で、黒体輻射の増加ばかりでなく、C_2分子の生成も認められた。これらのことから、フラーレンはサイズの小さなクラスターが集まって成長し、その際に黒体輻射やC_2脱離を行って内部温度が冷却し、最終的に球殻状の構造をとるというモデルを考えた。 (2)単層カーボンナノチューブを生成する際の雰囲気ガスの種類・圧力・流速を変化させてその生成効率がどう変化するかを詳しく検討した。その結果、単層カーボンナノチューブが生成する雰囲気ガスの最適圧力はガスの種類に大きく依存しないこと、また希ガス(Ne, Ar, Kr)に比べて窒素ガス(N_2)雰囲気で単層カーボンナノチューブを生成した方が、その純度が上がることが分かった。更に金属試料と炭素試料を別々にレーザー蒸発させても単層カーボンナノチューブが生成しうることから、金属微粒子はレーザー蒸発後時間がたってから(>ミリ秒)単層カーボンナノチューブの成長に寄与していることが明らかになった。
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