研究概要 |
長い剛直な共役分子は分子ワイヤーとし興味を持たれている。これらの分子の末端にピリジル基を導入することで、金属への配位や水素結合による自己集合が期待される。我々はジピリジルアセチレン類とクロラニル酸が新規な水素結合シントンにより一次元分子テープを形成することを報告した。今回は、ビスピリジルベンゼン1およびこの骨格に縮合チアジアゾール環を有する化合物2を合成し、それらの物性や錯体の構造について検討した。 拡散法で合成した1とクロラニル酸の錯体は、ほぼ平面の一次元のテープ状のネットワークから形成されている。この分子テープはN・・H・・O水素結合でつくられており、水素はクロラニル酸からピリジン環へ移動してイオン構造をとっている。クロラニレート-ピリジニウム環-ベンゼン環-ピリジニウム環.クロラニレートとスタックしていて、スタック間には短いC-Cl・・π接触が見られる。 チアジアゾール環を縮合した分子2はジブロモベンゾチアジアゾールとピリジルアセチレンとのSonogashiraカップリング反応により合成した。4, 4'-体の中性分子の構造はベンゾチアジアゾール環と2つのピリジン環はほぼ共平面にあるが、ジカチオン塩(HClO_4塩)では1つのピリジン環が面角44.5°と傾いていて、短いS・・N接触により二量体を形成しており、過塩素酸イオンがその量体を取り囲んでいる。2, 2'-および3, 3'-体は空間群は異なるものの結晶構造は4, 4'-体に類似している。このことはヘテロ原子の相互作用よりπ電子間の相互作用が優先していることを示している。2の還元電位(-1.00V)は1より0.75V高く、チアジアゾール環の電子受容性の効果が現れている。2はメチル化することでメチルピオローゲン類縁体のジカチオン塩を与えた。3.3'-および4, 4'-ジメチル体の還元電位はそれぞれ-0.52,-0.62Vに観測された。2およびジメチル体は強い蛍光を示し、その量子収率はNの位置によらず高い値を示した。
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