研究概要 |
固相合成と通常の溶液反応の長所を合わせ持ったハイブリッド合成手法として、タグと固相担体とのAffinityを利用して、タグを持つ化合物を速やかに分離する手法を確立した。昨年度までに大環状クラウンエーテルをタグに用いアンモニウムイオンを固相に担持する手法とバルビツール酸誘導体をタグに用い、その人工受容体を固相に担持する手法を見出した。本年度はこれらの方法が複雑な有機化合物の合成に適用できることを示すために、後者の方法を用いて、バクテリア由来の免疫増強活性複合糖質であるリピドAを選び、その合成について検討した。糖受容体をリンカーを介してバルビツール酸に結合させ、糖供与体との間でグリコシル化反応を行い、順次脱保護とアシル化を行った。各反応段階でAffinity精製を行うことで、単離を迅速に行った。バルビツール酸タグを除去した後、1位リン酸化と最終脱保護を行って大腸菌型リピドAの合成に成功した。本手法を用いることで従来は2,3ヶ月要した合成を約2週間で行うことが可能になった。さらに本方法を利用して6化合物からなるリピドA類縁体のライブラリーの合成にも成功した。 上記の方法はタグ部分を合成する必要があるが、より簡便な方法を目指しポリエチレングリコール(PEG)と固相担持アンモニウムイオンとの親和性を利用して、反応混合物からPEG tagを有する目的物を迅速に分離する方法を開発した。界面活性剤であるTriton X-100をPEG tagとして用いることによって、通常のPEG tagを用いた場合には困難であったエーテルを溶媒とする反応やTLCによる反応の追跡が可能になった。この方法を適用して糖鎖の迅速合成に成功した。
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