本研究は、種々の弱配位性アニオン種のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を新規に合成し、これらの金属塩を触媒に用いて、弱配位性有機溶媒中において極限的に活性化された親電子的なリチウムイオンによって促進される新しい炭素-炭素結合形成反応を開発することを目的した基礎的研究である。触媒機能発現に及ぼすアルカリ金属イオンの種類と弱配位性アニオン種の構造の影響、および、その反応機構の詳細を明らかにするため、実験化学的および計算化学的手法を駆使した研究を行った。 計算化学的研究:各種弱配位性アニオン種の配位性の大きさを定量的に評価するために、Gaussian98やSPARTANを用いたab initio法や密度汎関数法を用いて、リチウムイオンの親電子性に及ぼす対アニオンの効果を詳細に調べた。また、各種リチウム塩によって促進されるDiels-Alder反応やクアドリシクランの原子価異性化反応の反応遷移状態に関する精密理論計算を行い、リチウムイオンの特異性を考察した。 実験化学的研究:含フツ素テトラアリールホウ酸アニオン、イミドアニオン、メチドアニオンおよびアルミナートイオンなど各種弱配位性アニオン種のリチウム金属塩を合成し、これらのリチウム金属塩によって促進される各種有機溶媒中の塩化トリチルやトリチルアルコールのハロクロミズム、Diels-Alder反応、およびクアドリシクランの原子価異性化反応の比速度定数を用いて、脱溶媒和したリチウムイオンの特異なLewis酸性について速度論的に詳細に検討した。
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