研究概要 |
ニオブ及びモリブデン、タンタル、タングステン、レニウムの塩化物クラスター([(M6C112)C12(H2O)4]・4H2O(M=Nb,Ta)、(H3O)2[(M6C18)C16]・6H2O、<M=Mo,W)、[Re3C19])を触媒として、気相流通系でトルエンのメタノールによるアルキル化反応を行った。クラスターハライド自体に触媒活性は無いが、200度以上の温度で水素またはヘリウム気流下一時間程度焼成することにより触媒活性が出現し、o-およびm-,p-キシレンが生成し、さらにアルキル化が進んだトリメチルベンゼンが少量生成した。生成物はo-,p-配向性であった。ベンゼンを原料にしてもこの反応は進行しないが、キシレンを原料にするとトリメチルベンゼンが生成し、反応性はトルエン原料の時より高かった。加熱によるクラスターの活性化処理時に塩化水素の発生が見られたことに加え、活性化処理後のクラスターの分析から金属に対し塩素が不足したクラスターが生成したこと、X線分析やラマン分光分析の結果から金属骨格は保持されているが配位ハロゲンの配位様式が変更された構造であることが推定された。以上のことを踏まえ触媒活性発現機構としては、配位水の水素と配位塩素が塩化水素として脱離し、クラスター表面にオキソまたはヒドロキソ配位子が生成し、これが固体酸として働きメタノールからメチルカルボニウムイオンを生成し、芳香環のメチル化の触媒となったと結論づけられた。 つぎに、同様に前処理したハライドクラスターにp-ジエチルベンゼンを供給すると、異性化が進行しo-,およびm-ジエチルベンゼンが生成することが観察された。さらに後者を原料にした逆異性化反応も進行することが確認された。このように、クラスターは芳香環上のアルキル基の異性化触媒活性があることも分かった。 また、エチルベンゼンを原料にするとスチレンを与えることから、脱水素触媒活性もあることが分かった。
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