研究課題/領域番号 |
12640577
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物質変換
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
千原 貞次 独立行政法人理化学研究所, 化学分析室, 室長(副主任研究員待遇) (80087535)
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研究分担者 |
上口 賢 独立行政法人理化学研究所, 化学分析室, 研究員 (10321746)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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キーワード | ハライドクラスター / 触媒 / ハロゲン化モリブデン / 塩化ニオブ / ブレンステッド酸 / ヒドロキソ錯体 / オレフィン異性化 / 脱ハロゲン化水素 |
研究概要 |
ハライドクラスターと呼ばれる合成物質群が知られている。高温安定性や多原子多中心系、中間酸化状態の金属などの特徴を備えながら触媒としての利用例は無かった。そこで触媒としての利用研究に着手した。取り扱いが容易な5-7族金属塩化物クラスターを合成し、高温でも反応が可能で反応スクリーニングのためのパルス法にも転用可能な常圧固定床気相流通系を設置した。 まずクラスターの活性化を試みた。水素またはヘリウム気流下加熱を行ったところ、150℃付近でHC1の発生が始まり、400℃以上まで続いた。このクラスターを触媒とすると、酢酸フェニルのケテンとフェノールへの分解やアルコールの脱水、オレフィンの二重結合異性化、ハロゲン化アルカンの脱ハロゲン化水素などが進行した。世界に先駆けて、クラスターの発見後143年目にして「ハライドクラスター触媒」を実証した。そしてここに無機化学の金属ハロゲン錯体の分野と、有機化学の触媒の分野の融合領域が誕生した。 上記反応は従来から固体酸触媒によることから、活性化されたクラスターをピリジン吸着法で調べたところ、ブレンステッド酸点の生成が確認された。すなわち、モリブデンクスター(H_3O)_2[(Mo_6Cl_8)Cl_6]の場合、[(Mo_6Cl_8)Cl_4(OH_2)(OH)]に変化し、このヒドロキソ基のプロトンが活性点であると結論づけられた。 さらに反応の探索を行った結果、通常白金族金属が行う脱水素と水素化分解や、4族金属化合物が行う重合などの触媒となることも分かった。今後これらの触媒活性出現の機構を探る一方、新たな形式の活性化を求めた研究を行う。最終的な目的はこのハライドクラスター触媒の適用範囲とその限界を明らかにするとともに、これでしか実現できない新規触媒反応を開発し、「ハライドクラスター触媒」という新しい学問領域を完成させることにある。
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