地球環境の面から有機溶媒に替わる抽出媒体として超臨界二酸化炭素を用いる金属の分離方法の開発が注目されている。ところが、金属のキレート配位子による超臨界二酸化炭素への抽出系の定量的解析は、国の内外で行われておらず、機能性の超臨界抽出分離系の分子設計において極めて重要である。本研究では、超臨界二酸化炭素(SFCO_2)を用い、2-メチル-8-キノリノール誘導体の水/SFCO_2系の分配定数及びガリウム(III)の酸性溶液からのSFCO_2への抽出反応の抽出定数を決定し、SFCO_2の抽出媒体としての特性について検討した。2-メチル-8-キノリノールの5位にブチルオキシメチル基を有する2-メチル-5-ブチルオキシメチル-8-キノリノール(HMO_4Q)のSF_-CO_2/水間の分配定数(K_D)は、45℃、15.7MPaで10^<1.7±0.1>と決定された。これはヘプタン/水系(45℃、0.10MPa)の数10分の1以下である。HMO_4Qによるガリウム(III)のSFCO_2への抽出は、ヘプタン系よりも酸性側から起こることを明らかにした。更には、Ga(III)はHMQにより弱酸性溶液から45℃、15.7MPaにおいて全く抽出されないが、HMO_4QによりGa(OH)(MO_4Q)_2として定量的に抽出されことを見出した。SF_-CO_2への抽出定数(K_<ex>=[Ga(OH)(MO_4Q)_<2SF-CO2>[H^+]^3[Ga^<3+>]^<-1>[HMO_4Q]^<-2>_<SF-CO2>]として10^<-2.6±0.1>が得られ、45℃及び0.10MPaでのヘプタンに比べて63倍も大きい。この違いは、HMO_4QおよびGa(OH)(MO_4Q)_2のSF-CO_2/水間の分配定数がヘプタン/水間のそれより小さいことに基づくと考えられる。金属イオンのキレート配位子による超臨界二酸化炭素への抽出定数が決定されたのは本研究が最初である。以上のように本研究で得られた成果は、金属の分離化学の進歩に少なからず寄与すると期待される。
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