高速液体クロマトグラフィー分離系を構成する固定相として、表面の物理的・化学的特性が異なる種々の吸着剤(アルキル鎖の長さや修飾率を変化させた表面修飾シリカゲル、フェニル基修飾シリカゲル、多孔性有機ポリマー粒子および多孔性グラファイトカーボン粒子)、移動相として主にメタノール/水混合溶液、試料物質としてベンゼン誘導体やフェノール誘導体などの標準物質を使用する逆相液体クロマトグラフィー系においてパルス応答実験を行い、カラム内での物質移動に関する研究を行った。パルス応答曲線をモーメント法により解析し、保持平衡およびカラム内での物質移動速度に関する情報を得た。特に、表面拡散現象の解析という従来の速度論的研究とは異なる方向から検討を行った。またカラム温度条件を変化させてパルス応答実験を行い、逆相液体クロマトグラフィー系の保持および表面拡散の熱力学的特性を解析した。これらの研究結果を総合的に解析することにより、分離機構の系統的理解を検討した。 また、表面拡散現象に関する研究結果に基づき「表面-制限分子拡散モデル」を提案し、絶対反応速度論に基づきその定式化を検討した。本モデルの適用により、表面拡散の様々な特徴や物質移動機構を統一的に解析した。 さらに、連続多孔体(モノリス)固定相充填カラムに対する新規モーメント式を導出した。モノリスカラム内における試料物質の物質収支および物質移動速度を表わすGeneral kinetic modelの基礎式をラプラス変換し、ラプラス域での解析解を求めた。次にこの解析解から、実時間域における一次、二次モーメント式を誘導した。提案したモーメント式を用いて実測データを解析し、モノリスカラム内における物質移動に関する新たな情報を得ると共に、新規モーメント式の妥当性を確認した。
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