研究概要 |
新規ポリオキソタングステート錯体は,従来の有機試薬などと金属イオンとの錯生成反応と異なり,タングステン酸イオンと異種イオン種とが酸素原子を共有し縮重合することにより生成する。異種イオン種はそれ自身の酸素数によって,3配位酸素酸,4配位酸素酸,6配位酸素酸などに分類されるが,それに応じて生成する錯体の構造性,化学的性質が大きく変化する。 本年度は,新規ポリオキソタングステート錯体生成の基礎として,イソポリオキソタングステート錯体の生成条件の確立およびボルタンメトリック酸化還元挙動の解明を目的とした。まず,水溶液系および水-アセトニトリル混合溶媒系におけるタングステン酸イオンの縮合反応を検討した。タングステン酸イオンはpH7以上の水溶液系では単量体イオンWO_4^<2->として溶存するが,pHを下げると6配位へと配位数が増加し,複雑に縮合する。pH2近傍で[W_<10>O_<32>]^<4->が生成するが,これ以上酸濃度を上げると黄色酸化物WO_3として沈殿するため,高酸濃度の水溶液中で新規ポリオキソタングステートの探求は不可能であった。ところが,水-アセトニトリル混合溶媒系で,[W_<10>O_<32>]^<4->の領域の高酸濃度側に[W_6O_<19>]^<2->の生成を見出したことから,従来の水溶液系に比べ,新規錯体の合成条件を飛躍的に拡大することができた。その結果,タングスト硫酸錯体,タングストテルル酸錯体,タングストバナジン酸錯体などの新規タングステン錯体を合成することができた。現在,これらの錯生成反応の各種酸素酸イオンの高感度定量法への応用研究を進めている。 また,欠損型タングストリン酸錯体を配位子として用いることでキャピラリー電気泳動法による同一元素の酸化数別状態分析が可能となることを見出した。まだ,論文として纏めるには至ってないが,この応用研究も鋭意進めている。
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